投資信託の「買い方」はよく解説されていますが、「売り方」についてはあまり語られていないのが現状です。しかし実際のところ、投資の成功は「いつ売るか」で決まると言っても過言ではありません。
結論として、投資信託の売り時は「感情」ではなく「事前に決めたルール」で判断すべきです。暴落時のパニック売りや、なんとなくの利益確定が長期投資の大敵になります。
この記事では、投資信託を売るべきタイミングと売るべきではないタイミング、さらに老後の取り崩し戦略まで、具体的に解説していきます。

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多くの人がやりがちな売り時の失敗
投資初心者が特にやりがちな失敗パターンは以下の2つです。
- 暴落時にパニック売り:含み損に耐えられず、底値付近で売ってしまう
- 利益が出たらすぐ売り:少し利益が出ただけで「今のうちに」と売ってしまう
どちらも長期投資のパフォーマンスを大きく損なう行動です。では、いつ売るのが正解なのか、具体的に見ていきましょう。
投資信託を売るべき5つのタイミング
1. ライフイベントでお金が必要になったとき
住宅購入の頭金、子どもの教育費、転職中の生活費など、具体的な目的のためにお金が必要になったときは迷わず売却して問題ありません。
投資はあくまで人生を豊かにするための手段です。目的が達成できるのであれば、売ることは正しい判断です。
2. 目標金額に到達したとき
「1,000万円貯まったら家の頭金にする」「3,000万円で早期リタイアする」といった目標を設定している場合、その金額に達したら売るタイミングです。
ただし、一度に全額売る必要はありません。目標額を超えた分だけ売却して、残りは運用を続ける方法もあります。
3. リバランスのとき
資産配分が当初の計画からズレたときに調整するのがリバランスです。たとえば「株式70%・債券30%」の計画が、株価上昇で「株式85%・債券15%」になった場合、株式の一部を売って債券を買い増します。
リバランスは年1〜2回が目安です。利益確定ではなく、リスク管理として行うものと考えましょう。
4. 投資方針に合わなくなったとき
以下のような場合は売却を検討してもよいでしょう。
- ファンドの運用方針が変わった
- 信託報酬が他の類似ファンドと比べて割高になった
- 純資産総額が急減していて繰上償還のリスクがある
- より良いファンドが見つかった(ただし安易な乗り換えには注意)
5. 老後の取り崩しフェーズに入ったとき
資産形成期を終えて取り崩し期に入ったら、計画的に売却していきます。詳しくは後半で解説します。

投資信託を「売るべきではない」タイミング
逆に、以下のようなときに売るのは間違いです。
1. 暴落したとき
これが最もやってはいけないパターンです。株式市場は歴史的に何度も暴落していますが、毎回復活しています。
| 暴落イベント | 下落幅 | 回復までの期間 |
|---|---|---|
| リーマンショック(2008年) | -56% | 約4年 |
| コロナショック(2020年) | -34% | 約5ヶ月 |
暴落時に売るのは「一番安いときに売る」ということです。長期投資家にとって最悪の行動と言えます。暴落したときこそ「安く買えるチャンス」と捉え、積立を続けるべきです。
2. 「もっと下がりそう」という予想で売る
株価の短期的な動きを予測できる人はいません。プロのファンドマネージャーでも当てられないのです。市場のタイミングを計ろうとするのは、ほぼ確実に失敗します。
3. 周りが売っているから売る
SNSやニュースで「暴落!」「売り時!」といった情報が飛び交うと、つられて売りたくなるものです。しかしこれは群衆心理そのものであり、自分の投資方針に基づいて判断することが大切です。
4. 利益が出ているからなんとなく売る
「含み益があるうちに…」という理由だけで売るのはもったいない判断です。長期投資の複利効果は、持ち続けることで最大化されます。特に新NISA口座であれば非課税で運用し続けられるため、明確な理由がない限り売る必要はありません。
暴落時のパニック売りは、長期投資における最大の敵です。暴落は「安く買えるバーゲンセール」と考える心構えを持ちましょう。事前にルールを決めておけば、暴落時でも冷静に対処できます。
利益確定のルール|自分なりの基準を持とう
売る場合は、感情ではなくルールに基づいて判断すべきです。以下に、代表的なルールの例を紹介します。
ルール例1:目標金額ベース
「資産が3,000万円に達したら、500万円分を安全資産(債券・現金)に移す」
ルール例2:年齢ベース
「50歳を過ぎたら、毎年5%ずつ株式の比率を下げて債券に移す」
ルール例3:リバランスベース
「資産配分が当初計画から10%以上ズレたらリバランスする」
ルール例4:ライフイベントベース
「子どもが大学に入学する3年前から、教育費分を段階的に売却して現金化する」
どのルールでも構いませんが、事前に決めておくことが何より重要です。暴落時やバブル時に冷静な判断はなかなかできないため、あらかじめルールを設定しておき、機械的に実行するのが最善の方法です。

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老後の取り崩し戦略
積み立てた資産を老後にどう取り崩すかは、資産形成と同じくらい重要なテーマです。
定額取り崩し方式
毎月一定額(たとえば月10万円)を取り崩す方法です。
- メリット:生活費の計画が立てやすい
- デメリット:市場が暴落しているときに多くの口数を売ることになる
定率取り崩し方式
資産の一定割合(たとえば年4%)を取り崩す方法です。
- メリット:資産が長持ちしやすい。「4%ルール」が有名
- デメリット:取り崩し額が毎回変わるため、生活費の計画が立てにくい
4%ルールとは?
資産運用の有名な法則で、「年間で資産の4%ずつ取り崩せば、30年以上資産が持つ」というものです(米国のトリニティスタディが根拠)。
たとえば3,000万円の資産があれば、年間120万円(月10万円)を取り崩しても30年以上持つ計算になります。ただしこれは米国株の過去データに基づくもので、日本の投資環境に完全に当てはまるとは限りません。やや保守的に3〜3.5%で計算するのが安全でしょう。
新NISAでの売却の考え方
新NISAには特有のルールがあるため、売却時に知っておくべきポイントをまとめます。
売却後、翌年に非課税枠が復活する
新NISAでは、売却した分の非課税枠が翌年に復活します(取得価格ベース)。「一度売ったら枠がもったいない」とは考えなくても大丈夫です。
ただし年間の枠には上限がある
復活した枠を使えるのは翌年以降で、年間360万円の投資上限は変わりません。大量に売却しても翌年に一気に買い直すのは難しい場合があります。
特定口座より先にNISA以外を売るのが基本
複数の口座で投資している場合は、課税される特定口座の商品を先に売り、新NISAの非課税資産はできるだけ長く運用し続けるのが有利です。
売却時の税金のポイント
| 口座の種類 | 税金の扱い |
|---|---|
| 新NISA口座 | 利益に対する税金なし |
| 特定口座(源泉徴収あり) | 利益の20.315%が自動徴収。確定申告不要 |
| 特定口座(源泉徴収なし)/ 一般口座 | 確定申告が必要 |
| 損失が出た場合 | 特定口座同士で損益通算可能。3年間の損失繰越も可能(NISAは損益通算不可) |

まとめ|売り時は「感情」ではなく「ルール」で決める
- 売るべきタイミング:ライフイベント、目標達成、リバランス、方針変更、取り崩しフェーズ
- 売るべきでないタイミング:暴落時、予想による売り、周りに流されての売り、なんとなくの利益確定
- 事前にルールを決めて、機械的に実行するのが最善
- 老後の取り崩しは「4%ルール」を参考に
- 新NISA口座は売却後に枠が復活するため、必要以上に売却を恐れなくてOK
投資信託は「買ったら終わり」ではなく、「いつ・どう売るか」まで含めて戦略を立てることが大切です。明確なルールを持って、冷静に判断していきましょう。
資産の取り崩しシミュレーションは金融庁の資産運用シミュレーションで試すことができます。出口戦略の考え方はモーニングスターのコラムも参考になります。税金の詳細は国税庁のサイトで確認してください。
※この記事の情報は執筆時点のものです。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
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